株式会社 地盤試験所

VISION

100周年に向けた、
新たなチャレンジ

創業50周年を迎えた地盤試験所。現社長・山本伊作は、すでに100周年を見据えて、動き出している。次の50年をどのように描いていくのか。短期的な課題と長期的な目標、100年企業に向けて目指すべき成長の姿に迫る。

創業者である先代・金道繁紀(以下、先代)が掲げたポリシーである「人と技術を大切にする」は、変わらずにこれからも守り続けながら、一方で、時代に即した新たな戦略を練っていかなければならないと考えています。

地盤試験所が100年続く企業であるために、第一の目標としては、「海外市場の開拓」が必要です。
実は「海外進出」は、先代の夢でもありました。過去の新聞や資料を繰ると、15年ほど前から「今後はアジア市場を見据えていきたい」と意欲を持っていたことがわかります。
私が考える地盤試験所の未来図と、同じ形を先代も描いていたのです。

今後、日本は本格的に人口減少の時代に突入し、国内市場は縮小していくでしょう。
他方、アジアはこれからが成長期です。タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシアなど、東南アジアを中心に、インフラ事業が勃興していく時流に当社も果敢に参入し、シェアを拡大するチャンスだと考えています。

そもそも、当社が得意とする急速載荷試験やCPT調査(コーン貫入試験)の誕生と発展は、欧米に端を発するものです。ともすれば、海外への製品供給に留まらず、より広い視野を持って市場開拓を目指すのは必然でしょう。

そのための第一歩として、海外の学会などに積極的に参加し、英語の論文を発表するなどして広く情報を発信。加えて、世界の大学や研究所と共同開発や、アジア各国の優秀な人材を採用することも進めています。

当社にもそうした人材が増えてきていますが、台湾、ベトナム、ネパールなど、母国の有名大学を卒業した方たちは、深い専門知識に加えて、英語も堪能です。特に若手は、挑戦意欲とそのための能力が高く、仕事を通じて日本語も瞬く間に習得していきます。

日本に拠点を置く当社と、各国をつなぐ重要な懸け橋として、今後も大いに活躍の場を広げていってくれるでしょう。また、そうした動きを支える社内体制を整えようと、近い将来、「国際部」を設けることも視野に入れています。

魅力ある会社だから、
人材が集まり、個が成長する

第二の目標は、「人材確保と育成による持続可能な職場づくり」です。

前述のとおり、アジアの優秀な人材を採用することに加え、日本国内でも、新卒採用とミドル層の育成に力を入れていきます。

大企業とは違い、多くの中小企業にとって、人材獲得は切実な課題でしょう。ただ待っているばかりでは、当社の理念に共感してくれる優秀な学生とは出会えません。

積極的に全国の大学へ足を運び、学生や教授、研究室、就職課と積極的に細やかなコミュニケーションを図ることで、こちらから能動的に学生をリクルートする所存です。

とはいえ、なかなか仕事のイメージがつきにくい業種ですから、まずはインターンとして業務にコミットしてもらい、「おもしろそうだ!」と魅力を感じてもらえたら、正式な雇用へとつなげていきます。

余談ですが、私は超就職氷河期と呼ばれる時代に、大学を卒業しました。
就職活動の大変さ、昨今の学生を取り巻く経済的環境の厳しさも、ある程度、理解しているつもりです。

しかし、それで未来ある若者たちに腐ってほしくない。
青春の貴重な時間を使って、専門知識を学んだのです。ぜひそれを活かして、ビジネスパーソンとして活躍していってもらいたい。

「自分の人生を賭けてもいい」「こういう会社なら入りたい」。そう思ってもらえるような社内体制を構築し、個人の成長を支援していきたいと願っております。

同時に、現在働いてくれている社員たちにも、「今後もここで働き続けたい」と実感してもらえるよう、社内制度や仕組みを刷新中です。

例えば、かつては結婚・出産のタイミングで退職される女性社員が多くいました。本来であれば、企業側が産休・育休制度をしっかり整え、戻ってこられる環境をつくれば、キャリアの中断をせずに済むはずです。
会社としても復帰してもらえれば、長く苦楽をともにしてきた信頼のおける人材を失わず、大きな財産になるでしょう。

これからは性別を問わず、産休・育休・その他休暇制度・福利厚生などを整備する。さらに各人の働きに応じて、役職も給与も上昇していく仕組みを整え、社員のモチベーションアップにつなげることこそ、経営者の使命だと考えているわけです。

当社ではすでに、国や地方自治体の施策とは別に、地盤試験所オリジナルの「子ども手当」「奨学金制度」「資格取得手当」などを計画し、さらなる充実を図っています。
例えば、従来、社員に子どもが生まれた場合は、3万円のお祝い金を出していました。それを30万円に改定するとともに、その子どもが中学3年生になるまで、継続的に支援していきます。

また、大学の就職課や先生方からは、奨学金返済のため30代、40代になっても苦慮することがあるという実態を伺いました。
そこで当社では大学進学だけではなく、資格取得も含めた返済不要の奨学金制度を、月2万円から年200万円まで、さまざまなケースごとに設けていきます。会社を支える中堅社員の方々にも、ぜひ学び続けていってほしい。

これは私の持論ですが、「仕事のやりがい」以前に、「お金の問題」が人生には付きまとうのです。だからこそ、同じ職場で働く仲間として、日々の努力がしっかり目に見える形で報われる仕組みは必須でしょう。
それが結局は働きがいにつながり、発展的な人材確保や個人の持続的な成長を実現していくと考えています。

今から見つけて育てた事業が、
30年後に花開く

第三に掲げるのは、「技術力と開発力の向上」。
他社では取り組んでいないことに挑戦する姿勢」を今後も崩さないよう、非常に重要なミッションで、これは先代が定めた「技術こそが発展の要」という当社の根本原理に基づくものです。

そのためにも、新しい技術や市場へ果敢にチャレンジして、そこで成果を生み出し、会社の成長に貢献した社員にはしっかりと報いることこそが、企業の持続的な発展には必要不可欠でしょう。

まずは、インフレが進む日本で、先行きの不安なく日々の生活を送れるように、社員の給与を3割程度アップさせる。その上で、会社への貢献度に応じて、期末賞与やボーナス、一時金といった目に見える形で、個人を評価する仕組みを構築します。

来期(2023年50期)、当社は「売上収益18億円、経常利益3億円」という目標を掲げており、これは決して絵に描いた餅ではありません。
その背景には、日本全国で広がりを見せている洋上風力発電施設の建設事業があります。

今後、10年、20年と国家規模で推進されていく事業において、施工前の海上での地質調査や設備建設に向けた杭の支持率試験、施設自体の耐久性確認試験などを高い水準で効率的に行えるのは、日本で地盤試験所だけなのです。
この強烈なアドバンテージが、当社における来期以降の中長期的な成長を支えていくでしょう。

これも、単なる新しいもの好きではない、先代が持っていた先見の明と、地道な努力の賜物です。
例えば、技術的に高い精度を実現でき、低コストかつ短時間でできるCPT調査が日本に入ってきたのは、およそ30年前。当時、競合他社も積極的に導入し、開発に力を入れていました。

しかし、開発されたヨーロッパの柔らかい地盤に比べ、わが国の地盤には固い地層が存在し、CPT調査が広く汎用化されるには至らなかったのです。
日本では固い地層を突破できるボーリング調査が主力となり、各社がCPT調査の導入から撤退していきました。

その中で、地盤試験所だけがコツコツと開発・発展にいそしんできたわけです。
それは、顧客にとってのメリットが大きいと考えたからこそ。

日本全国で導入が進む洋上風力発電施設は、主にヨーロッパ企業の技術を輸入して進んでおり、地盤調査の基準としてCPT調査が推奨されています。
現在、その技術を実用レベルで要するのは、当社だけなのです。長年、CPT調査技術の普及を目指し、赤字に耐えながら、開発を続けてきた先人たちの苦労が、今ようやく花開こうとしています。

地盤試験所は創業以来、「今、伸びている分野」と並行して、「将来、伸びる分野」を考え続けてきました。
現段階でも中長期的には、洋上風力発電施設にまつわる成長が見込めますが、20年後、50年後の成長の種は、また別に眠っているはずなのです。

私たちは、それを探し続けなくてはなりません。

「効率が良く、品質が良く、コストが良く、お客様に喜んでいただける製品・サービス」とは何か。その中には、これまで手付かずだったICT技術の導入や、AIによるビックデータ活用も含まれているでしょう。
長年蓄積してきた地盤のデータに付加価値を与え、全国の地盤に関するコンサルタント事業も拡充していくつもりです。

「ニッチな分野で、グローバルな成長」を。少子高齢化という時代の流れさえも逆手に取り、コツコツと、しかし大胆に。
次の50年における成長を実現し、未来へと飛躍していきたいと願っております。